SLEEP SCIENCE
かんたんお風呂ヨガと睡眠
38〜40度、15分、就寝の90分前。毎日の入浴を眠りの装置に変える方法と、湯上がりのキャット&カウを解説します。

今夜から使えるヒントがあるよ
すでに持っている習慣
毎晩、湯船に湯を張って浸かる。この習慣を国民のほとんどが持っている国は、世界的に見ても多くありません。多くの国では、入浴はシャワーで済ませるものです。
私たちはこの習慣を、疲れを取るため、体を清潔にするため、あるいは単に気持ちがいいから続けてきました。眠るための準備として意識している人は、あまり多くないかもしれません。
けれども入浴は、眠りに向かうための条件を整えるうえで、最も手軽で効果的な手段のひとつです。新しく何かを始める必要はありません。すでにある習慣を、少しだけ組み立て直すだけです。
体温は下がるときに眠くなる
眠気は、体温が下がるときに訪れます。
正確には、深部体温と呼ばれる体の内側の温度です。手足の皮膚温とは別に、内臓や脳の温度が一日のなかで上下しています。夕方に最も高くなり、そこから明け方に向かって下がっていきます。
この下がる過程で、私たちは眠気を感じます。眠りに入るとき手足が温かくなるのは、内側の熱を手足の表面から逃がしているサインです。
ここに、入浴を使う理由があります。
湯に浸かると深部体温が一時的に上がります。体はその上がった状態を元に戻そうとして、放熱を始めます。つまり入浴は、体温を「上げる」ためではなく、そのあとに「大きく下げる」ために使います。落差が大きいほど、眠気は強く訪れます。
何もしなければ、体温はゆるやかにしか下がりません。入浴は、その傾きを意図的に作る方法です。
38〜40度、15分、就寝の90〜120分前
条件が三つあります。温度、時間、タイミングです。
温度は38〜40度。熱い湯に入ると目が覚めるのは、交感神経が刺激されるからです。42度を超えるような湯は、体を活動モードに切り替えてしまいます。眠る前の入浴としては逆効果です。ぬるいと感じるくらいがちょうどよく、それでも深部体温は十分に上がります。
時間は15分程度。長く浸かればいいわけではありません。のぼせるほど入ると、かえって体に負担がかかります。
タイミングは就寝の90分から120分前。これが最も見落とされやすい条件です。
入浴で上がった深部体温が下がりきるまでには、時間がかかります。上がってすぐ布団に入っても、体はまだ熱を放出している最中で、眠りに入りにくい状態です。90分から120分ほど置くと、ちょうど下降の途中にあたり、眠気が来やすくなります。
体温と同じ湯に、10分から15分
もうひとつ、少し変わった方法があります。
自分の体温を測り、それと同じ温度の湯に浸かる。それだけです。時間は10分から15分。
熱くもなく、冷たくもない湯のなかでは、体は温度を意識しなくなります。皮膚から入ってくる感覚が減り、意識が内側に向きやすくなります。湯に浸かっているという感覚そのものが、だんだん薄れていきます。
私たちはこれを湯温瞑想と呼んでいます。
一般的な入浴が、深部体温の落差をつくるための働きかけだとすれば、こちらは意識の切り替えを促すものです。一日のあいだ外に向き続けていた注意が、内側に戻ってきます。考えごとが止まらない夜、頭が休まらない夜に向いています。
体温は人によって違い、同じ人でも日によって違います。だからこの方法には、決まった湯温がありません。その日の自分に合わせる、という設計です。
湯上がりのキャット&カウ
湯から上がった直後の体は、温まって筋肉がゆるみ、いつもより動かしやすい状態にあります。この時間を使います。
ここで行うのは、キャット&カウという動きです。サンスクリット語ではマルジャリアーサナ&ビティラーサナと呼ばれ、ヨガのなかでも基本的なポーズにあたります。
四つばいになります。手首は肩の下、膝は股関節の下に置き、上半身はテーブルのようにマットと平行にします。
息を吐きながら、下腹部、おへそ、みぞおちの順に背中を丸めていきます。目線は股関節へ。
息を吸いながら、背骨を反らせていきます。目線は斜め上へ。
この二つを、10回ほど繰り返します。
首を縮めないよう気をつけてください。反らせるときに顎だけを上げると、首の後ろが詰まります。肩と肩甲骨を腰の方向へ下ろしながら動かすと、背骨全体が使えます。
背骨を丁寧に動かすことで、一日のあいだに固まった背中がほぐれます。そして呼吸を深く長く使うことが、副交感神経への切り替えを促します。眠る前の体を、活動から休息へ向かわせる動きです。
床に手をつくのが難しい場合は、椅子に座ったまま行う方法もあります。
書籍のご案内
ここで紹介した内容は、『かんたんお風呂ヨガ』(早坂信哉・若林貴久 著)の一部です。

入浴医学を専門とする早坂信哉教授との共著で、日本シニアヨガ協会の認定本でもあります。全30ポーズと呼吸法2種を収録し、それぞれに椅子で行う方法も併記しました。動画のQRコードもついています。
お洒落なウェアは要りません。部屋着のままで構いません。お風呂が面倒だと感じている方にこそ読んでいただきたい一冊です。
はじめてみる
今夜からできることは、たった一つです。
入浴の時刻を、就寝の90分前に合わせてみてください。湯温は38度から40度、15分ほど。それだけで、眠りへの入り方が変わることがあります。
うまくいかない場合は、原因が別のところにあるのかもしれません。生活リズムそのものが後ろにずれている、寝る前の光の量が多すぎる、ストレスによる覚醒が強い。人によって、つまずいている場所は違います。
Sleep Wellness Institute Japan では、認定講師が一人ひとりの状態を見て、実践の順序を組み立てています。
眠りの前の時間の使い方は、練習できます。