SLEEP SCIENCE
子どもと睡眠
寝不足の子どもは「眠そう」に見えません。必要な時間と、思春期に体内時計がずれるということ。

その時期に合った眠り方を、いっしょに見ていこう
日本の子どもは、眠れていません
国際比較のデータを見ると、日本の子どもの睡眠時間は世界最短の水準にあります。
夜型の生活、塾や習い事、スマートフォン。理由はいくつもありますが、結果として多くの子どもが睡眠不足のまま日中を過ごしています。
そして、睡眠不足の子どもは「眠そう」には見えません。
大人と逆の反応が出る
大人は寝不足だとぼんやりします。子どもは違います。イライラする、落ち着きがない、集中できない、じっとしていられない。
こうした様子が、性格の問題や集中力のなさとして扱われてしまうことがあります。実際には、眠りが足りていないだけかもしれません。
年齢ごとの、必要な睡眠時間
米国睡眠医学会が推奨している時間です。
- 1〜2歳 11〜14時間(昼寝を含む)
- 3〜5歳 10〜13時間(昼寝を含む)
- 6〜12歳 9〜12時間
- 13〜18歳 8〜10時間
小学生に9時間以上、と聞いて驚く方がいるかもしれません。朝7時に起きるなら、夜9時から10時には眠っている必要があります。
ただし、これは目安です。個人差があります。朝、自分で起きられるかを見てください。毎朝起こすのに苦労するなら、足りていない可能性があります。
眠っているあいだに、育っている
成長ホルモンと身体の発達
「寝る子は育つ」には根拠があります。成長ホルモンは、入眠後の最初の深いノンレム睡眠で最も多く分泌されます。骨や筋肉の成長に直接関わっています。
脳の発達と、記憶の整理
子どもの脳では、使われる神経回路を強め、使われない回路を刈り込む作業が進んでいます。この整理は、眠っているあいだに行われます。
学んだことが定着するのも睡眠中です。夜遅くまで勉強して睡眠を削るのは、覚えたことを定着させる時間を削っているのと同じです。
感情の調整
睡眠不足の子どもは、感情のコントロールが難しくなります。些細なことで泣く、怒る、癇癪を起こす。眠りが足りると、これが落ち着くことがあります。
思春期に、体内時計がずれます
中学生、高校生になると、夜眠くならなくなります。
これは、生物学的な変化です
思春期には、メラトニンの分泌が始まる時刻が2時間ほど後ろにずれます。世界中で観察される現象で、意志や生活習慣だけの問題ではありません。
夜11時になっても眠くならない。朝7時に起きられない。これは怠けではなく、体内時計がそういう位置にあるということです。
学校の始業時間との、ずれ
体は深夜近くまで眠くならないのに、朝は早く起きなければならない。この矛盾が、慢性的な睡眠不足を生みます。
海外では、始業時間を遅らせる試みが行われています。成績の向上、遅刻の減少、交通事故の減少といった効果が報告されています。
家庭でできること
学校の時間は変えられません。できるのは、夜のほうを守ることです。
- 朝、しっかり光を浴びる(体内時計を前に戻す)
- 夜、強い光を避ける
- 週末に寝坊しすぎない(2時間以内に留める)
スクリーンとの付き合い方
スマートフォン、タブレット、ゲーム機。
光の問題
画面の光、特にブルーライトはメラトニンの分泌を抑えます。就寝前に浴びると、眠くなるタイミングが遅れます。
それ以上に、中身の問題
実は、光より問題なのは内容のほうです。
動画やゲーム、SNSは、脳を興奮させます。「あと1本」「あと1試合」で止まらない設計になっている。友達からの通知が気になって手放せない。
これは意志の弱さではなく、そういう仕組みで作られているからです。
現実的な線引き
「就寝1時間前から見ない」が理想ですが、守れないことも多いでしょう。
- 寝室に持ち込まない(充電はリビングで)
- 時間を決めて、家族全員で守る
- 親も同じルールに従う
子どもだけに我慢を求めると、うまくいきません。
気をつけたい兆候
以下がある場合は、小児科や耳鼻科で相談してください。
- 大きないびきをかく 扁桃腺やアデノイドの肥大による無呼吸の可能性
- 眠っているときに呼吸が止まる
- 口を開けて寝ている
- 十分寝ているはずなのに、日中眠そう
- おねしょが続く(年齢に対して)
- 脚がむずむずして眠れないと訴える
子どもの睡眠時無呼吸は、成長や学習に影響します。手術で改善することも多く、放置しないほうがよい問題です。
まとめ
- 日本の子どもの睡眠時間は世界最短の水準
- 睡眠不足の子どもは「眠そう」ではなく、落ち着きがなくなる
- 小学生で9〜12時間、中高生で8〜10時間が目安
- 成長ホルモン、脳の発達、記憶の定着が睡眠中に進む
- 思春期は体内時計が2時間後ろにずれる。生物学的な変化
- スクリーンは光より、興奮させる中身のほうが問題
- いびきや無呼吸があれば、医療機関へ
実践へ
まず、朝の光から始めてみてください。
起きたらカーテンを開ける。朝食を明るい場所で食べる。可能なら、登校前に少し外に出る。
夜の時間を早めるのは大変ですが、朝の光を増やすのは今日からできます。体内時計が前に戻り、夜の眠気が早く来るようになります。
そして、完璧を求めないこと。
「がんばらない。ゆるめすぎない」。毎日9時就寝は無理でも、週の半分守れれば違います。親が疲れ果てるルールは続きません。続くやり方を探すほうが、結果的にうまくいきます。
参考
- Paruthi S, et al. Recommended amount of sleep for pediatric populations: a consensus statement of the American Academy of Sleep Medicine. J Clin Sleep Med. 2016;12(6):785-786.
- Carskadon MA. Sleep in adolescents: the perfect storm. Pediatr Clin North Am. 2011;58(3):637-647.
- Matricciani L, et al. In search of lost sleep: secular trends in the sleep time of school-aged children and adolescents. Sleep Med Rev. 2012;16(3):203-211.
- Marcus CL, et al. Diagnosis and management of childhood obstructive sleep apnea syndrome. Pediatrics. 2012;130(3):e714-755.
- 厚生労働省. 健康づくりのための睡眠ガイド2023.
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