SLEEP SCIENCE
体内時計(概日リズム)とは?
からだの中には、24時間よりわずかに長い時計があります。毎朝それをリセットしているのは、光です。ずれと、合わせ方の話。

仕組みがわかると、安心して眠れるよ
たとえ一日中まったく同じ照明の部屋にいても、体温は上下し、ホルモンは決まった時刻に分泌され、眠気は周期的に訪れます。からだの中に、時計があるからです。
時計は、脳の中心にある
からだの時計の本体は、脳の視床下部にある視交叉上核(SCN)という領域です。左右の視神経が交差する場所のすぐ上にあり、大きさは米粒よりずっと小さい。そこに約2万個の神経細胞が集まって、およそ24時間のリズムを刻んでいます。
このリズムは外から与えられたものではなく、細胞の中で遺伝子が働いては抑えられ、また働くという周期を繰り返すことで生まれています。細胞を体から取り出して培養しても、リズムは刻まれ続けます。
ずれているから、合わせる必要がある
ここが体内時計のいちばん大事な性質です。
ヒトの体内時計の周期は、ちょうど24時間ではありません。外界の手がかりを完全に断った環境での研究では、平均しておよそ24.2時間とされています。1日あたり十数分、実際の時間より長い。
放っておけば、毎日少しずつ後ろにずれていきます。1週間で1時間以上、1か月で数時間。それでも私たちが毎日同じ時刻に眠くなるのは、毎日リセットしているからです。
このリセットの手がかりを同調因子(ツァイトゲーバー=時間を与えるもの)と呼びます。食事、運動、社会的な予定も同調因子になりますが、最も強力なのは光です。
光は「見るため」だけのものではない
網膜には、ものを見るための細胞(錐体・杆体)とは別に、メラノプシンという色素をもつ特別な細胞があります。この細胞は像を結ぶ働きをせず、光の強さだけを検出して、視交叉上核へ直接信号を送ります。
つまり網膜には二つの回路があるということです。見るための光と、時計を合わせるための光。
この細胞が最も強く反応するのは、青色に近い短波長の光です。晴れた日の空、そして画面の光がここに含まれます。
光は、浴びる時刻ですべてが変わる
同じ光でも、時刻によって働きが正反対になります。
・朝〜午前の光 — 体内時計を前へ進める。早く眠くなり、早く起きられる方向へ
・夜の光 — 体内時計を後ろへ遅らせる。眠くなる時刻が後ろにずれる
境目になるのは、深部体温がいちばん低くなる時刻です。だいたい起床のおよそ2時間前にあたります。ここより前に浴びる光は時計を遅らせ、ここより後の光は時計を進めます。
夜更かしをして夜中まで明るい画面を見ていると、体内時計は後退します。翌朝つらいのは睡眠時間が足りないからだけでなく、からだの中の時刻がまだ夜だからです。そして朝の光を浴びないと、その後退は戻りません。ずれは積み重なっていきます。
平日と休日でずれる「社会的時差ぼけ」
平日は無理に早く起き、休日は昼まで眠る。この生活を続けると、休日のたびに体内時計が後ろへずれ、月曜の朝にまた強引に引き戻すことになります。
海外へ移動していないのに時差ぼけと同じ状態になるため、ソーシャルジェットラグ(社会的時差ぼけ)と呼ばれます。日曜の夜に眠れず、月曜の朝がつらい原因のひとつがこれです。
対策はシンプルです。休日も起床時刻を大きく変えない。眠る時刻より、起きる時刻のほうが体内時計への影響が大きいからです。眠りが足りなければ、起きて光を浴びたあとで昼寝で補うほうがずれは小さくなります。
まとめ
・体内時計の本体は脳の視交叉上核にあり、細胞そのものがリズムを刻んでいる
・ヒトの周期は平均約24.2時間。毎日リセットしなければずれ続ける
・網膜には「見るための光」とは別に「時計を合わせるための光」の回路がある
・朝の光は時計を進め、夜の光は遅らせる。境目は深部体温が最低になる起床2時間前ごろ
・休日の寝坊が積み重なると、社会的時差ぼけになる
実践へ
起きたら、まず窓の近くに立つ。 曇りの日でも屋外の明るさは室内照明よりはるかに強く、時計を合わせるには十分です。5分から10分で構いません。
そして夜は照度を落とす。天井の照明を消して、目線より低い位置の暖色の灯りに替えるだけでも、目に届く短波長の光は大きく減ります。
メラトニンヨガ™が朝と夜で異なる実践を用意しているのは、この光と時刻の関係に沿っているためです。
参考
・Czeisler CA, et al. Stability, precision, and near-24-hour period of the human circadian pacemaker. Science. 1999
・Berson DM, et al. Phototransduction by retinal ganglion cells that set the circadian clock. Science. 2002
・Wittmann M, et al. Social jetlag: misalignment of biological and social time. Chronobiology International. 2006