SLEEP SCIENCE
心拍変動と心拍数の関係
心拍数は速さ、心拍変動はゆらぎ。スマートリングやウォッチが示す数値の意味と、ちょうどいい付き合い方。

仕組みがわかると、安心して眠れるよ
似ているようで、別のものです
スマートリングやウォッチを使っていると、心拍数のほかに「HRV」や「心拍変動」という数値が出てきます。
心拍数は、1分間に心臓が何回打つか。60回なら「60bpm」です。
心拍変動は、その拍と拍の間隔のばらつきです。
心拍数が60bpmだとしても、きっちり1秒おきに打っているわけではありません。0.98秒、1.03秒、0.95秒、1.06秒。実際にはこのように、わずかに揺れています。この揺れ幅が心拍変動です。
平均だけを見ていると、この違いは見えません。同じ60bpmでも、きれいに揺れている人と、ほとんど揺れない人がいます。
ゆらいでいるほうが、良い状態です
直感に反するかもしれませんが、心拍の間隔はばらついているほうが健康的です。
心臓は、自律神経から常に指示を受けています。交感神経は速く打たせ、副交感神経は遅く打たせる。この2つが状況に応じて綱引きをしていて、その結果が拍ごとのわずかな差になって現れます。
- ゆらぎが大きい 自律神経が細かく調整できている。環境の変化に応じられる状態
- ゆらぎが小さい 調整の余地が少ない。疲労、ストレス、体調不良などで、体が一定モードに固まっている状態
機械のように正確なリズムは、この場合、良い兆候ではありません。
眠っているあいだの変化
入眠後、副交感神経が優位になる
眠りに入ると、副交感神経の働きが強まります。心拍数は下がり、同時に心拍変動は大きくなります。体が回復モードに入った合図です。
深いノンレム睡眠のとき、最も落ち着く
一晩のうちで心拍数が最も低く、変動が最も大きくなるのは、前半の深いノンレム睡眠の時間帯です。
明け方に向けて、逆転していく
朝が近づくと、覚醒に備えて交感神経が戻ってきます。心拍数は少しずつ上がり、変動は小さくなっていきます。
だから、同じ人でも測る時間帯によって数値がまったく違います。日中の数値と睡眠中の数値を比べても意味がありません。
数値の読み方
他人と比べない
心拍変動の絶対値には、非常に大きな個人差があります。年齢、体格、遺伝的な要素で決まる部分が大きく、「20台の人より50台の人のほうが良い」とは言えません。
比べるべき相手は、過去の自分です。
安静時心拍数のほうが、わかりやすい
心拍変動は日ごとの振れが大きく、読み取りに慣れが要ります。一方、睡眠中の安静時心拍数は比較的安定していて、いつもより5拍以上高い日は「何かあった日」と考えやすい。
初めて数値を見る人には、こちらから入ることをおすすめします。
測定方法で数値が変わる
指先や手首の光学センサーで測る機器と、胸に着ける心電図タイプでは、得られる数値が違います。機器を変えたら、それ以前の数値との比較はできません。
数値を下げるもの
睡眠中の心拍変動が下がり、心拍数が上がる要因は、だいたい決まっています。
- 飲酒 就寝前の飲酒は、心拍数を明確に上げます。翌朝の数値は正直です
- 就寝直前の食事 消化のために内臓が働き続けます
- 強度の高い運動 夕方以降の高強度運動は、夜まで交感神経が残ります
- 精神的なストレス 心配ごとを抱えたまま眠ると、数値に出ます
- 発熱・体調不良 自覚症状より先に数値が変わることがあります
- 暑すぎる寝室 体温調節に体力を使います
自分の生活のどれが効いているかは、数値を数週間見ていると見えてきます。
数値との、ちょうどいい距離
最後に、大事なことをひとつ。
数値を良くすることが目的になると、本末転倒です。
毎朝スコアを確認して、低い日に落ち込む。良い数値を出すために神経質になる。これでは、測定そのものがストレス源になります。実際、数値を気にしすぎて眠れなくなる人がいます。
日々の上下は無視して構いません。見るべきは、週単位、月単位の傾向です。
数値は、自分の体を知るための道具です。道具に振り回されるようなら、しばらく見ないほうがいい。それも立派な使い方です。
まとめ
- 心拍数は速さ、心拍変動は拍と拍の間隔のゆらぎ
- ゆらぎが大きいほうが、自律神経が調整できている状態
- 眠りの前半で心拍数は下がり、変動は大きくなる
- 絶対値は個人差が大きい。比べるのは過去の自分
- 飲酒、就寝前の食事、夜の激しい運動が数値を下げる
- 日々の上下ではなく、週単位の傾向を見る
実践へ
今夜から、ひとつだけ試してみてください。
寝る前にお酒を飲んだ日と、飲まなかった日の数値を比べる。
それだけで、自分の体がアルコールにどう反応するかがわかります。他の誰でもない、自分自身のデータです。
数値が思わしくない日があっても、責める必要はありません。体が正直に反応しているだけです。「がんばらない。ゆるめすぎない」。数値も、そのくらいの距離で眺めるのがちょうどいいと思います。
参考
- Shaffer F, Ginsberg JP. An overview of heart rate variability metrics and norms. Front Public Health. 2017;5:258.
- Task Force of the European Society of Cardiology and NASPE. Heart rate variability: standards of measurement, physiological interpretation, and clinical use. Circulation. 1996;93(5):1043-1065.
- Tobaldini E, et al. Heart rate variability in normal and pathological sleep. Front Physiol. 2013;4:294.
- Sajjadieh A, et al. The association of sleep duration and quality with heart rate variability and blood pressure. Tanaffos. 2020;19(2):135-143.
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