SLEEP SCIENCE
月経と睡眠
眠れる週と、眠れない週がある。ホルモンと体温が周期で動くから。仕組みと、時期ごとの過ごし方。

眠れない週があるのは、あなたのせいじゃないよ
眠りは、周期とともに動いています
「先週はよく眠れたのに、今週は寝つけない」。
生活は何も変えていないのに、眠りの質が週単位で変わる。心当たりのある方は多いと思います。
月経周期のあいだ、体の中では2つのホルモンが増減を繰り返しています。エストロゲンとプロゲステロン。この2つは、眠りにも影響します。
つまり、眠りの調子が変わるのは自然なことです。意志や努力の問題ではありません。
2つのホルモンと、体温の変化
卵胞期(月経開始から排卵前)
月経が始まってから排卵までの約2週間。エストロゲンが増えていく時期です。
深部体温は低めに保たれ、体温が下がりやすい。この時期は比較的、眠りが安定します。寝つきもよく、深い眠りも取りやすい。
黄体期(排卵後から月経前)
排卵を過ぎると、プロゲステロンが増えます。
このホルモンには体温を上げる働きがあります。基礎体温表で排卵後に体温が上がるのは、このためです。
深部体温が高いということは、眠るために下げるべき体温が、下がりきらないということ。この時期に寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなったりするのは、体温のせいです。
月経直前
月経が始まる直前、プロゲステロンとエストロゲンが両方とも急激に減ります。この落差が大きいほど、心身の変化も大きく出ます。
眠いのに、眠れない
黄体期には、相反するように見える2つの症状が起きます。
日中の強い眠気
プロゲステロンには、鎮静作用のある代謝物があります。これが日中の眠気を引き起こします。「会議中に耐えられないほど眠い」という経験は、気の緩みではありません。
夜の不眠
一方で、夜は体温が下がりきらないため眠りが浅くなります。中途覚醒も増えます。
日中は眠いのに、夜になると眠れない。この組み合わせが、黄体期の典型的なパターンです。
さらに眠りが浅いと日中の眠気が増し、悪循環になります。
月経前の不調と、眠り
月経前に心身の不調が出る状態を、PMS(月経前症候群)と呼びます。症状が重く、日常生活に支障が出る場合はPMDD(月経前不快気分障害)と呼ばれます。
不眠は、この主要な症状のひとつです。
そして関係は双方向です。眠れないと感情の調整が難しくなり、イライラや落ち込みが強まる。それがまた眠りを妨げる。
眠りを整えることは、月経前の不調そのものを軽くする可能性があります。
周期に合わせるという考え方
同じ生活を毎日続けようとすると、うまくいかない週が必ず出てきます。周期に合わせて、やり方を変えるほうが現実的です。
卵胞期(調子が出やすい時期)
体温が下がりやすく、眠りが安定します。予定を詰めるなら、この時期。運動もしやすく、睡眠リズムを整えるのに適しています。
黄体期(無理をしない時期)
- 寝室を少し涼しく 体温が高いので、いつもより1〜2度下げる
- 入浴は早めに、ぬるめで 就寝直前の熱い風呂は逆効果になりやすい
- 日中の眠気は受け入れる 15〜20分の仮眠が取れるなら取る
- カフェインを控えめに 眠りの浅さが増幅されます
- 予定を詰め込まない できないことを責めない
月経中
出血による鉄分の減少で、だるさが出ることがあります。無理に活動量を保とうとせず、休むことを優先してかまいません。
相談を考えたほうがよい場合
以下にあてはまるときは、婦人科で相談する選択肢があります。
- 月経前の不眠で、仕事や生活に支障が出ている
- 気分の落ち込みが強く、自分でコントロールできない
- 月経痛が強く、痛みで眠れない
- 経血量が多く、貧血の症状(だるさ、動悸、息切れ)がある
- 周期が極端に不規則になった
低用量ピルやホルモン療法で周期の変動そのものを抑える方法もあります。生活の工夫だけで対処しようとする必要はありません。
まとめ
- 月経周期のあいだ、エストロゲンとプロゲステロンが増減する
- 黄体期はプロゲステロンで体温が上がり、眠りが浅くなる
- 日中の眠気と夜の不眠が同時に起きるのは、この時期の特徴
- 卵胞期は体温が下がりやすく、眠りが安定する
- 眠りを整えることは、月経前の不調を軽くする可能性がある
- 支障が出ているなら、婦人科という選択肢がある
実践へ
まず、記録から始めてみてください。
月経の開始日と、眠りの調子。この2つだけで構いません。手帳でもアプリでも。
2〜3周期分たまると、自分のパターンが見えてきます。「排卵の数日後から寝つきが悪くなる」「月経の3日前がいちばんつらい」。それがわかれば、その時期に予定を詰めないという判断ができます。
眠れない週があるのは、おかしなことではありません。周期があるということです。
「がんばらない。ゆるめすぎない」。眠れない週は、眠れない週として過ごす。それも、体に合わせるということだと思います。
参考
- Baker FC, Driver HS. Circadian rhythms, sleep, and the menstrual cycle. Sleep Med. 2007;8(6):613-622.
- Baker FC, Lee KA. Menstrual cycle effects on sleep. Sleep Med Clin. 2018;13(3):283-294.
- Shechter A, Boivin DB. Sleep, hormones, and circadian rhythms throughout the menstrual cycle in healthy women and women with premenstrual dysphoric disorder. Int J Endocrinol. 2010;2010:259345.
- Nowakowski S, et al. Sleep and women's health. Sleep Med Res. 2013;4(1):1-22.
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