SLEEP SCIENCE
中途覚醒と睡眠
夜中に目が覚めるのは、眠りの構造上ふつうのことです。分かれ目は覚醒そのものではなく、そのあとの反応にあります。

今夜から使えるヒントがあるよ
まず、眠りの形を思い出しておきます。
ひと晩の眠りは、深いノンレム睡眠とレム睡眠が交互に訪れる周期でできています。ひと周期はおよそ90分。ひと晩に4回から5回、この波が繰り返されます。
波の切り替わりのたびに、眠りは浅くなります。このとき、覚醒のすぐ手前まで浮上している。物音がすれば目が覚めるし、寝返りを打つのもこのタイミングです。
ほとんどの覚醒は、覚えていない
実は、健康な人でもひと晩に何度も目が覚めています。
脳波を測ると、数秒から十数秒の短い覚醒が繰り返し記録されます。ところが本人はそれを覚えていない。記憶に残るには、ある程度の長さの覚醒が必要だからです。
つまり、「夜中に一度も目が覚めなかった」と感じている人も、実際には何度も浮上しています。違いは、覚醒が起きたかどうかではなく、それが記憶に残ったかどうか。
この事実は、少し気持ちを楽にしてくれます。目が覚めること自体を減らそうとするのではなく、覚めたあとにすっと戻れるかどうかを見ればいい。
年を重ねると増えるもの
加齢とともに中途覚醒が増えるのは、自然な変化です。
若い頃に比べて、深いノンレム睡眠の割合が減っていきます。深い眠りは外からの刺激に強く、多少の物音では目が覚めません。その層が薄くなれば、浮上しやすくなるのは当然のことです。
あわせて、体内時計の振幅も小さくなります。夜のメラトニン分泌が減り、深部体温の下がり幅も小さくなる。眠りを深く保つ力そのものが穏やかになっていきます。
これは衰えというより、変化です。20代と同じ眠り方を目指すのではなく、いまの自分に合った眠り方を探すほうが現実的です。
眠りの後半を壊すもの
中途覚醒を増やす要因のうち、自分で調整できるものがいくつかあります。
アルコール。寝つきは良くなりますが、代謝される過程で覚醒作用のある物質が生じ、眠りの後半を浅くします。飲んだ日は寝つきが早いのに、夜中に目が覚める。この落差はよく知られたものです。
水分と夜間頻尿。夜中にトイレで目が覚めるのは、覚醒が先か尿意が先か、順番がはっきりしないことがあります。眠りが浅くなって目が覚め、そこで尿意に気づく、という順序も少なくありません。
寝室の温度。深部体温が下がる過程は眠りを深くしますが、明け方に向けて体温が上がり始めると眠りは浅くなります。この時間帯に室温が高すぎると、覚醒しやすくなります。
心配ごと。眠る前に整理しきれなかった考えは、浅い眠りの層に浮上したときに再開されます。夜中に目が覚めて、いきなり考えごとが始まるのはこのためです。
問題は、覚めたあとにある
ここが、この話のいちばん大事なところです。
目が覚めること自体は避けられません。分かれ目は、そのあと数分でまた眠りに戻れるか、それとも覚醒が続いてしまうかです。
戻れなくなる人には、共通する反応があります。時計を見る。あと何時間眠れるかを計算する。眠らなければと焦る。眠れない自分を責める。どれも、交感神経を刺激して覚醒を強める方向に働きます。
本来ならただの浮上で終わったはずの覚醒が、この反応によって本格的な覚醒に変わってしまう。中途覚醒が「症状」になるのは、多くの場合この段階です。
だから対処は単純です。時計を見ない。眠ろうと努力しない。20分ほど経っても眠れなければ、一度布団を出て暗い場所で静かに過ごし、眠気が来てから戻る。
布団のなかで眠れない時間を過ごすと、「布団=眠れない場所」という結びつきが強まっていきます。それを避けるために、いったん離れるほうがいい。逆説的ですが、眠ることをあきらめるほうが眠りに近づきます。
相談を考えたほうがよい場合
生活の工夫では届かない背景があることもあります。以下にあてはまるときは、専門機関で相談する選択肢を持っておいてください。
・大きないびきを指摘される、呼吸が止まっていると言われたことがある
・十分な時間眠っているのに、日中の眠気が強い
・脚がむずむずして眠れない、寝ているあいだに脚がぴくつくと言われる
・夜中に何度もトイレに起きる状態が続いている
・気分の落ち込みが続き、早朝に目が覚めてしまう
これらは、努力や心がけで解決する種類のものではありません。背景がはっきりすれば対処法もはっきりします。
まとめ
・眠りは周期の波でできており、つなぎ目で浅くなる。目が覚めるのは構造上ふつうのこと
・健康な人も何度も覚醒している。違いは記憶に残るかどうか
・加齢で深いノンレム睡眠が減り、中途覚醒が増えるのは自然な変化
・アルコール、室温、心配ごとは眠りの後半を浅くする
・分かれ目は覚醒そのものではなく、そのあとの反応。時計を見ない、努力しない
・いびきや日中の強い眠気を伴うときは、専門機関へ
実践へ
今夜、もし目が覚めたら、何もしないでみてください。
時刻を確認しない。あと何時間かを数えない。ただ、暗いなかで呼吸が出入りしているのを眺める。多くの場合、それだけでまた眠りに戻れます。
戻れなければ、それはそれで構いません。一度起きて、暗い場所で過ごす。読書でも、静かな音でも。眠気が来たら戻ればいい。
メラトニンヨガ™が「がんばらない」を軸にしているのは、眠りが努力の効かない領域だからです。夜中に目が覚めた自分を責めないこと。それが、いちばん確かな対処になります。
参考
・Ohayon MM, et al. Meta-analysis of quantitative sleep parameters from childhood to old age in healthy individuals. Sleep. 2004;27(7):1255-1273.
・Bonnet MH, Arand DL. Clinical effects of sleep fragmentation versus sleep deprivation. Sleep Med Rev. 2003;7(4):297-310.
・Ebrahim IO, et al. Alcohol and sleep I: effects on normal sleep. Alcohol Clin Exp Res. 2013;37(4):539-549.
・Perlis ML, et al. Psychophysiological insomnia: the behavioural model and a neurocognitive perspective. J Sleep Res. 1997;6(3):179-188.