SLEEP SCIENCE
ノンレム睡眠とレム睡眠
眠りは一様ではなく、性質の違う状態を行き来しています。前半と後半で役割が違うこと、そして「レム=浅い眠り」ではないこと。

仕組みがわかると、安心して眠れるよ
眠りは、性質のまったく違う二つの状態を行き来しています。片方では脳が静まり、もう片方では脳が覚醒時に近いほど活発に動いています。
二つの眠り
ノンレム睡眠
脳の活動が落ち、脳波はゆっくり大きな波に変わっていきます。深さによって3段階に分けられます。
・N1 — うとうとした移行期。数分程度
・N2 — 睡眠の中心。全体の約半分を占めます。脳波に紡錘波やK複合波という特徴的な波形が現れます
・N3 — 徐波睡眠。最も深い段階で、ゆっくりした大きな波が優勢になります
レム睡眠
まぶたの下で眼球が素早く動くことから名づけられました(Rapid Eye Movement)。脳波は覚醒時に近く、脳の代謝も高い。一方で、骨格筋の緊張はほぼ完全に失われます。夢を行動に移してしまわないための仕組みです。
「レム=浅い眠り」ではない
よくある誤解です。
「深い/浅い」という表現は、ノンレム睡眠の中の段階(N1〜N3)を指す言葉です。レム睡眠はその物差しの上にはありません。深い眠りでも浅い眠りでもなく、別種の眠りです。
実際、レム睡眠中は外からの刺激で目覚めにくい面もあり、単純に浅いとは言えません。
ノンレムとレムは、どちらかが良い眠りということではなく、両方が必要です。
90分の周期と、一晩の構造
眠りに入ると、N1→N2→N3と深まり、その後浅くなってレム睡眠へ移ります。ここまでで1サイクル。おおむね90分ですが、実際には70分から110分程度の幅があり、一晩に4回から6回繰り返されます。
重要なのは、サイクルの中身が一晩を通じて変化していくことです。
・前半(最初の2〜3サイクル) — N3の徐波睡眠が多く、レムは短い
・後半(明け方に近づくほど) — 徐波睡眠はほとんど現れず、レム睡眠が長くなる
つまり、深い眠りは前半に、レム睡眠は後半に偏っています。
だから、削る時間によって失うものが違う
この偏りには、実際的な意味があります。
寝る時刻が遅くなると、前半にあるはずの徐波睡眠が削られます。
朝早く起きると、後半にあるはずのレム睡眠が削られます。
同じ「睡眠時間が5時間」でも、どちらを削ったかで失われるものが変わります。
それぞれの役割は、まだ研究が進んでいる途中ですが、これまでに分かっていることがあります。
徐波睡眠(N3)
成長ホルモンの分泌がこの時間帯に集中します。脳内の老廃物を洗い流す仕組みも、この段階で活発になることが報告されています。出来事の記憶を定着させる働きにも関わっています。
レム睡眠
記憶どうしを結びつける処理や、情動の整理に関わると考えられています。つらい出来事の感情的な強さが時間とともに和らいでいく過程にも、レム睡眠が関与しているという見方があります。
「嫌なことがあった日は早く寝たほうがいい」というのは、経験則としてだけでなく、後半のレム睡眠を確保するという意味を持っています。
ウェアラブルの「睡眠ステージ」をどう読むか
スマートリングやスマートウォッチが表示する「深い睡眠」「レム睡眠」の数値について、注意しておきたいことがあります。
睡眠段階の判定は、本来は脳波・眼球運動・筋電図を同時に記録して行うものです。手首や指で測れるのは、心拍、体動、皮膚温などの間接的な指標にすぎません。
そこから推定する精度は、機器や世代によって差があり、「眠っているか起きているか」の判別に比べて、段階の判別は精度が落ちるのが一般的です。
だからといって無意味ではありません。一晩ごとの絶対値ではなく、数週間の傾向として読む。飲酒した日、遅く食べた日、入浴した日で自分の数値がどう動くか。その比較にこそ価値があります。
数値に一喜一憂して眠れなくなるのでは本末転倒です。
まとめ
・眠りはノンレム(N1〜N3)とレムという性質の違う状態を行き来している
・レム睡眠は「浅い眠り」ではなく、別種の眠り
・1サイクルはおよそ90分。一晩に4〜6回繰り返す
・徐波睡眠は前半に、レム睡眠は後半に偏る
・ウェアラブルの段階推定には限界がある。傾向として読む
実践へ
「90分の倍数で起きる」ことにこだわりすぎない。 サイクルの長さには個人差も日内変動もあり、きっちり90分で回るわけではありません。それより、十分な長さを確保することと、起床時刻を一定にすることのほうが効きます。
そして、削るなら前半より後半——という選択はできません。前半を削れば後半も後ろにずれます。結局のところ、眠りは一続きの構造です。
メラトニンヨガ™が入眠までの時間を重視するのは、前半の徐波睡眠が一日の中で最も取り返しがきかない部分だからです。眠りに落ちる最初の90分は、こちらで用意できる最後の余白でもあります。
参考
・Berry RB, et al. The AASM Manual for the Scoring of Sleep and Associated Events. American Academy of Sleep Medicine
・Xie L, et al. Sleep drives metabolite clearance from the adult brain. Science. 2013
・Walker MP, van der Helm E. Overnight therapy? The role of sleep in emotional brain processing. Psychological Bulletin. 2009
・de Zambotti M, et al. Wearable sleep technology in clinical and research settings. Medicine & Science in Sports & Exercise. 2019