SLEEP SCIENCE
室温と湿度と睡眠
エアコンの設定を変えるだけ。今夜からできて、その晩に効く。眠りにとっての適温と適湿を、理由から。

今夜から使えるヒントがあるよ
いちばん変えやすい場所です
眠りをよくするために、早く寝る。運動する。スマホを見ない。どれも正しいのですが、続けるには意志の力が要ります。
その点、寝室の温度と湿度は違います。エアコンの設定を変えるだけ。今夜からできて、効果もその晩に出ます。
それなのに、意外と手つかずのままになっている。「暑いから26度」「寒いから20度」と、なんとなくの体感で決めている方が多いのではないでしょうか。
眠りにとっての適温には、理由があります。
なぜ、室温が眠りを左右するのか
眠りに入るとき、体の中では深部体温が下がっています。
深部体温とは、内臓を含めた体の内側の温度のこと。これが下がり始めると眠気が訪れ、下がりきったあたりで深い眠りに入ります。
手足は、熱を逃がすための場所
体の内側を冷やすには、熱をどこかへ逃がす必要があります。その出口が手足です。
眠くなると手足が温かくなるのは、皮膚の血管が広がって血液が集まり、そこから熱を放出しているからです。眠い子どもの手が温かいのは、この現象です。
暑すぎても、寒すぎても困る
室温が高すぎると、手足から熱が逃げません。放熱できないので深部体温が下がらず、寝つきが悪くなります。
では低ければいいかというと、そうでもありません。寒すぎると体は熱を守ろうとして皮膚の血管を縮めます。すると出口が閉じてしまい、これもまた放熱できなくなります。
温度と湿度の目安
研究や実務で使われている目安は、おおよそ次の範囲です。
- 夏 室温 26〜28℃/湿度 50〜60%
- 冬 室温 16〜19℃/湿度 50〜60%
冬の16℃を寒く感じる方が多いと思います。これは寝具と着衣を前提にした数値です。布団の中が32〜34℃程度に保たれていれば、室温はこのくらいで足ります。
逆に、寝具が薄い、パジャマが薄手、という場合はもっと高くする必要があります。数値だけを追わず、朝の状態で判断してください。
朝の目覚めで確かめる
起きたときに汗をかいている、喉が渇いている 暑すぎ、または乾燥しすぎ
体が縮こまっている、布団から出たくない 寒すぎ
すっと起きられる ちょうどよい
湿度は、見落とされがちです
温度ばかり気にして、湿度を見ていない方が多くいます。しかし同じ26℃でも、湿度40%と湿度75%ではまったく違う夜になります。
高すぎると、汗が乾かない
人は眠っているあいだにコップ1杯程度の汗をかきます。この汗が蒸発するときに熱を奪うことで、体温が下がります。
湿度が高いと、汗が蒸発できません。放熱の仕組みがひとつ止まってしまうため、同じ温度でも寝苦しく感じます。梅雨時の不快感は、これです。
低すぎると、喉と鼻が乾く
湿度が40%を下回ると、喉や鼻の粘膜が乾きます。乾燥した粘膜は刺激に敏感になり、咳やいびきの原因になることがあります。
冬に暖房をつけたまま眠ると、湿度が30%台まで落ちることがあります。加湿の併用をおすすめします。
一晩中つけるか、タイマーで切るか
電気代を考えて、タイマーで数時間後に切れるよう設定している方は多いと思います。ただ、眠りの観点からは、これは考えものです。
タイマーが切れたあと、室温はゆっくり動き始めます。夏なら上がり、冬なら下がる。そしてその変化が効いてくるのが、ちょうど眠りの後半です。
眠りの後半は、もともと浅くなる時間帯です。深いノンレム睡眠の割合が減り、わずかな刺激でも目が覚めやすくなっている。そこに室温の変化が重なります。
明け方に暑さや寒さで目が覚める。この経験があるなら、タイマー設定を見直す価値があります。
基本は、つけっぱなし
設定温度を控えめにして一晩通す。そのほうが、強い設定で数時間だけ動かすより、室温が安定します。消費電力の面でも、極端に不利とは限りません。
ただし冬は乾燥します。加湿器を併用するか、濡れたタオルを室内に干すなどして、湿度を保ってください。
温度以外の環境
温度と湿度が整ったら、次はこのあたりです。
- 光 豆電球でも眠りに影響します。真っ暗が基本。遮光カーテンが有効
- 音 完全な無音より、一定の環境音のほうが眠りやすい人もいます
- 寝具 通気性が悪いと、室温を下げても布団の中が暑くなります
- パートナーとの体感差 同じ部屋で快適な温度が違う場合、寝具や着衣で調整するほうが現実的です
まとめ
- 眠りに入るには、手足から熱を逃がして深部体温を下げる必要がある
- 暑すぎても寒すぎても、放熱がうまくいかない
- 目安は夏26〜28℃、冬16〜19℃、湿度は通年50〜60%
- 湿度が高いと汗が蒸発せず、低いと喉と鼻が乾く
- タイマーで切ると、明け方の浅い眠りと室温変化が重なる
- 控えめな設定で一晩通すほうが安定する。冬は加湿を併用
実践へ
今夜、寝室に温湿度計を置いてみてください。千円ほどで手に入ります。
体感と実際の数値は、驚くほどずれています。「涼しいと思っていたら28℃だった」「乾燥しているとは思わなかったが35%だった」。まず現状を知ることからです。
数値がわかったら、目安の範囲に近づける。それだけで、朝の目覚めが変わることがあります。
完璧な環境を目指す必要はありません。「がんばらない。ゆるめすぎない」。極端に暑くない、極端に乾いていない。そのくらいで十分です。
参考
- Okamoto-Mizuno K, Mizuno K. Effects of thermal environment on sleep and circadian rhythm. J Physiol Anthropol. 2012;31(1):14.
- Troynikov O, et al. Sleep environments and sleep physiology: a review. J Therm Biol. 2018;78:192-203.
- Lan L, et al. Ten questions concerning thermal environment and sleep quality. Build Environ. 2017;111:16-22.
- Kräuchi K, et al. Warm feet promote the rapid onset of sleep. Nature. 1999;401(6748):36-37.
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