SLEEP SCIENCE
睡眠と瞑想の関係
瞑想は睡眠の代わりになりません。それでも眠りに効くのは、「眠れない」への反応が変わるから。

うまくやろうとしなくて、だいじょうぶ
瞑想中に眠くなるのは、失敗か
瞑想を始めた人が最初にぶつかるのが、これです。
座って目を閉じる。呼吸に注意を向ける。数分後、意識が遠のいている。
「集中力がない」「向いていない」と感じるかもしれません。
そうではありません。体が休息モードに入った証拠です。緊張していては、眠気は来ません。眠くなったということは、少なくとも体は緩んでいます。
ただし、瞑想としては目的が違う
瞑想が目指しているのは、目覚めたまま静かでいる状態です。眠ってしまうと、そこから離れます。
眠くなったら、姿勢を正す。目を薄く開ける。それでも眠いなら、その日は眠ってしまって構いません。体が休息を求めているということです。
睡眠と瞑想は、別の状態です
似ているようで、脳の状態は異なります。
代わりにはなりません
「瞑想すれば睡眠時間を減らせる」という説を見かけることがありますが、これは支持されていません。
瞑想は休息にはなりますが、睡眠中に起きている生理的な処理を代替できません。成長ホルモンの分泌も、記憶の定着も、脳の老廃物の排出も、眠らなければ起きません。
なぜ、眠りに効くのか
では、瞑想は眠りに何をしているのか。
過覚醒を下げる
不眠の多くには、過覚醒という状態が関わっています。
体は疲れているのに、頭が働き続けている。布団に入っても考えごとが止まらない。明日の予定、今日の失敗、来週の心配。
瞑想は、この状態に直接働きかけます。注意を今この瞬間に向けることで、思考のループから一時的に離れる練習になります。
「眠れない」に反応しなくなる
これが、瞑想の最も大きな貢献かもしれません。
眠れないとき、多くの人は焦ります。時計を見る。あと何時間眠れるか計算する。明日がつらいと考える。この反応が交感神経を刺激し、さらに眠れなくなる。
瞑想の訓練は、起きていることに反応しない練習です。「眠れない」という状態が起きている。それに気づいている。でも、そこに焦りを足さない。
眠れない夜そのものは、なくなりません。ただ、眠れない夜の苦しさは減ります。
マインドフルネスの研究
不眠に対するマインドフルネス瞑想の効果は、比較的よく研究されている分野です。
睡眠の質、入眠までの時間、日中の疲労感について改善を示す報告が複数あります。認知行動療法(CBT-I)と組み合わせた形での有効性も検討されています。
ただし、効果の大きさは中程度で、すべての人に効くわけではありません。
寝る前にやるべきか
これは、意見が分かれるところです。
寝る前にやる場合
横になって行う瞑想(ボディスキャンなど)は、そのまま眠りに移行できます。
- 仰向けで、体の各部分に順番に注意を向ける
- 眠ってしまっても構わない
- 「眠るためにやる」とは考えない
ただし、座って行う本格的な瞑想を寝る前にすると、かえって覚醒することがあります。
日中にやる場合
朝や日中の瞑想は、その日全体の交感神経の高ぶりを下げます。夜になってから対処するより、根本的かもしれません。
多くの伝統では、瞑想は朝に行われてきました。
続かない理由
瞑想は、始める人は多く、続く人は少ない実践です。
時間が長すぎる
30分やろうとすると続きません。3分から始めてください。短くても、毎日のほうが効果があります。
「うまくやろう」とする
雑念が浮かぶのは当然です。それに気づいて、注意を戻す。この繰り返しが瞑想そのものであって、雑念が浮かばない状態が目的ではありません。
「今日は集中できなかった」という日は、存在しません。
効果を測ろうとする
すぐに変化を求めると、続きません。数週間から数か月の単位で、じわじわ変わるものです。
何もしない時間に、耐えられない
これが根本的な理由かもしれません。スマホを手放して、何もしない時間を持つ。現代の生活では、これ自体が難しくなっています。
注意が必要な場合
瞑想は誰にでも安全というわけではありません。
強い不安やつらい記憶を抱えている場合、静かに座って内面に注意を向けることで、それらが浮かび上がることがあります。
気分の落ち込みが強いとき、瞑想がかえって反芻思考(同じことを何度も考えること)を強めることもあります。
そうした場合は、専門家の指導のもとで行うか、体を動かすもの(ヨガ、散歩)から始めるほうが安全です。
まとめ
- 瞑想中に眠くなるのは失敗ではないが、瞑想の目的ではない
- 睡眠と瞑想は別の状態。瞑想は睡眠の代わりにならない
- 瞑想は過覚醒を下げ、「眠れない」への反応を減らす
- 眠れない夜はなくならないが、その苦しさは減る
- 夜は横になって行う軽いもの、座る瞑想は朝か日中に
- 3分から。うまくやろうとしない
- 強い不安が続く場合は、専門家の指導のもとで
実践へ
今夜、布団の中で3分だけ。
呼吸を数えてみてください。
吐くときに1、次に吐くときに2。10まで数えたら、また1に戻る。
途中でわからなくなったら、1から数え直す。それだけです。
わからなくなるのが普通です。それを何度でも繰り返してください。
眠ってしまったら、それでいい。眠れなくても、3分間じっとしていられた。それで十分です。
「がんばらない。ゆるめすぎない」。何かを達成しようとしない時間を持つこと。それ自体が、眠りに向かう体の状態です。
参考
- Ong JC, et al. A randomized controlled trial of mindfulness meditation for chronic insomnia. Sleep. 2014;37(9):1553-1563.
- Black DS, et al. Mindfulness meditation and improvement in sleep quality and daytime impairment among older adults with sleep disturbances. JAMA Intern Med. 2015;175(4):494-501.
- Rusch HL, et al. The effect of mindfulness meditation on sleep quality: a systematic review and meta-analysis. Ann N Y Acad Sci. 2019;1445(1):5-16.
- Britton WB, et al. Awakening is not a metaphor: the effects of Buddhist meditation practices on basic wakefulness. Ann N Y Acad Sci. 2014;1307:64-81.
- Riemann D, et al. The hyperarousal model of insomnia. Sleep Med Rev. 2010;14(1):19-31.
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