SLEEP SCIENCE
瞑想の種類
仏教系、ヨガ系、その他。成り立ちも方法も違います。眠りに向くもの、向かないもの。

うまくやろうとしなくて、だいじょうぶ
「瞑想」という言葉の幅
マインドフルネス、ヴィパッサナー、坐禅、ヨーガニードラ、超越瞑想。
すべて瞑想と呼ばれますが、やっていることは同じではありません。目を閉じて座る点は共通していても、注意の向け方も、目指すものも異なります。
大きく2つに分けられます
多くの瞑想は、次のどちらかに整理できます。
集中型は、ひとつの対象に注意を集めます。呼吸、マントラ、ろうそくの炎。注意が逸れたら、対象に戻す。
観察型は、浮かんでくるものをそのまま観察します。判断を加えず、追いかけず、ただ気づく。
集中型は入りやすく、観察型は難しい。多くの伝統では、集中の練習から始めて、観察へ進みます。
仏教系の瞑想
サマタ(止)
集中型の代表です。ひとつの対象に注意を留め続け、心を静める。呼吸を数える方法がよく知られています。
ヴィパッサナー(観)
観察型です。体の感覚、感情、思考。それらが生まれては消えていくのを、ただ観察する。
10日間の合宿形式で行われるものが有名ですが、日常の中で短時間行うこともできます。
禅(坐禅)
日本で最もなじみのある形かもしれません。姿勢を整え、呼吸を整え、心を整える。
曹洞宗の只管打坐(しかんたざ)は、何かを目指さずただ座る。臨済宗では公案という問いを用います。
マインドフルネス
仏教のヴィパッサナーを土台に、宗教的な要素を取り除いて医療・心理の現場向けに再構成されたものです。1970年代にジョン・カバットジンが体系化しました。
不眠に対する研究の多くは、この形式を用いています。宗教色がないため、研究しやすく、導入もしやすい。
ヨガ系の瞑想
ラージャヨガ(八支則の瞑想)
ヨガの古典『ヨーガ・スートラ』では、瞑想は八つの段階の一部として位置づけられています。
姿勢(アーサナ)、呼吸(プラーナヤーマ)を経て、感覚を内に向け(プラティヤハーラ)、集中し(ダーラナ)、瞑想へ(ディヤーナ)。
つまり、ポーズも呼吸も、瞑想の準備という構造です。ヨガのクラスの最後に静かに座る時間があるのは、この流れに沿っています。
ヨーガニードラ
「ヨガの眠り」と訳されます。仰向けで横になり、誘導に従って体の各部分に順番に注意を向けていく。
眠りと覚醒の境界にとどまる状態を目指しますが、実際には眠ってしまう人も多い。眠りに最も近い瞑想であり、就寝前に向いています。
トラタク
ろうそくの炎など、ひとつの対象を見つめる集中法。目を閉じたあとも残像に注意を向けます。
マントラ瞑想
音や言葉を繰り返す。声に出す場合も、心の中で唱える場合もあります。
その他
超越瞑想(TM)
1950年代にマハリシ・マヘーシュ・ヨーギーが広めたもの。個人に与えられるマントラを、1日2回20分繰り返します。
研究数は多いものの、有料の講習を通じてのみ学べる形式のため、独立した検証が難しいという指摘もあります。
慈悲の瞑想(メッタ)
自分や他者に向けて、幸福を願う言葉を心の中で繰り返します。「私が幸せでありますように」から始め、対象を広げていく。
不安や自己批判が強い人に向くとされます。
動く瞑想
座るだけが瞑想ではありません。
歩く瞑想(歩行禅)、太極拳、気功。動作に注意を向け続けることで、同じ状態に入ります。
じっと座っていられない人、体を動かすほうが集中しやすい人には、こちらのほうが合うことがあります。
眠りとの相性
すべての瞑想が、眠りに向くわけではありません。
夜に向くもの
- ヨーガニードラ そのまま眠りに移行できる
- ボディスキャン マインドフルネスの一種。横になって行う
- 呼吸を数える 単純で、頭を使わない
- 慈悲の瞑想 不安を和らげる
夜に向かないもの
- 公案 問いを考え続けるため、思考が活性化する
- 長時間の座位 姿勢を保つ緊張が続く
- 強いプラーナヤーマ 火の呼吸などは交感神経を刺激する
時間帯を分ける
座って行う本格的な瞑想は朝か日中に。夜は横になって行う軽いものに。この使い分けが現実的です。
どれを選ぶか
優劣はありません
「この瞑想が最も効果がある」という主張には、慎重でいたほうがいいと思います。
伝統ごとに目指すものが違い、比較しにくい。研究も、方法がばらばらなため統一した結論が出しにくい。
選ぶ基準は、続けられるかどうか
- 座るのが苦手なら、動く瞑想や横になる瞑想
- 一人だと続かないなら、アプリの音声ガイドやクラス
- 宗教的な背景が気になるなら、マインドフルネス
- 深く学びたいなら、伝統的な形式
入り口としては
眠りが目的なら、ヨーガニードラかボディスキャンから。横になったままできて、眠ってしまっても構わない。失敗のしようがありません。
注意しておきたいこと
強い勧誘に気をつける
瞑想を教える団体の中には、高額な費用を求めたり、生活全体を管理しようとしたりするものがあります。
瞑想そのものは、誰のものでもありません。無料で学べる方法も、書籍も、アプリもあります。
合宿形式は、心身への負荷がある
10日間の沈黙合宿などは、深い体験が得られる一方、心理的な負荷も大きい。気分が不安定な時期は避けたほうが安全です。
つらくなったら、やめていい
瞑想中に強い不安や苦痛が出ることがあります。「乗り越えるべきもの」と考えず、やめて構いません。
まとめ
- 瞑想は大きく、集中型と観察型に分けられる
- 仏教系にはサマタ、ヴィパッサナー、禅、マインドフルネス
- ヨガ系ではポーズと呼吸が瞑想の準備という構造
- ヨーガニードラは眠りに最も近い瞑想
- 夜は横になるもの、朝は座るものと使い分ける
- 優劣はない。続けられるかどうかで選ぶ
- 高額な勧誘や、合宿の負荷には注意
実践へ
今夜、ヨーガニードラを試してみてください。
仰向けになって、目を閉じる。そして、右手の親指に注意を向ける。次に人差し指、中指、薬指、小指。手のひら、手首、前腕、肘、上腕、肩。
同じことを左手で。次に右脚、左脚、胴体、頭。
それだけです。眠ってしまったら、それでいい。最後まで意識があったら、それもいい。
「がんばらない。ゆるめすぎない」。どの瞑想を選ぶかより、続けられるかどうかのほうが、ずっと大事だと思います。
参考
- Lutz A, et al. Attention regulation and monitoring in meditation. Trends Cogn Sci. 2008;12(4):163-169.
- Kabat-Zinn J. Mindfulness-based interventions in context: past, present, and future. Clin Psychol Sci Pract. 2003;10(2):144-156.
- Datta K, et al. Yoga nidra practice shows improvement in sleep in patients with chronic insomnia. Indian J Med Res. 2021;153(5-6):739-748.
- Goyal M, et al. Meditation programs for psychological stress and well-being: a systematic review and meta-analysis. JAMA Intern Med. 2014;174(3):357-368.
- Van Dam NT, et al. Mind the hype: a critical evaluation and prescriptive agenda for research on mindfulness and meditation. Perspect Psychol Sci. 2018;13(1):36-61.
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