SLEEP SCIENCE
5分でわかる古典ヨガ
ヨガ哲学の代表的な経典「ヨガ・スートラ」を、4つの章の流れに沿って5分で読める形にまとめました。

うまくやろうとしなくて、だいじょうぶ
ヨガ・スートラは、古代インドにおいてパタンジャリによって編纂・体系化されたとされる、ヨガ哲学を代表する経典です。
「スートラ」とは、サンスクリット語で「糸」という意味があります。非常に短い言葉を糸のようにつなぎながら、「ヨガとは何なのか」「人間の心はなぜ苦しむのか」「どうすれば心を整えることができるのか」「最終的にヨガはどこを目指しているのか」ということが説かれています。
4つの章で語られる、ひとつの道すじ
ヨガ・スートラは、大きく4つの章、パーダに分かれています。一般的には全部で196のスートラ、つまり196の短い教えから構成されています。伝本によっては195と数える場合もあります。
構成は、第1章「サマーディ・パーダ」51節、第2章「サーダナ・パーダ」55節、第3章「ヴィブーティ・パーダ」56節、第4章「カイヴァリヤ・パーダ」34節です。
この4章をとても簡単に言うと、第1章は「ヨガとは何かを知る」、第2章は「実際にヨガを実践する」、第3章は「実践を深めて心を観察する」、第4章は「ヨガによって自由になる」という流れになっています。
第1章 サマーディ・パーダ ― ヨガとは何かを知る
最初の章は「三昧についての章」です。ここではまず、「そもそもヨガとは何なのか」が説明されます。
有名なのが第1章2節、「ヨーガス・チッタ・ヴリッティ・ニローダハ」です。一般的には「ヨガとは、心の働きを静めることである」と訳されます。
繰り返すことと、手放すこと
そのために重要なのが、繰り返し実践することを意味する「アビヤーサ」と、執着しないことを意味する「ヴァイラーギャ」です。
つまり第1章は、「ヨガとは何なのか。そして、心が静まった状態とは何なのか」を理解する章です。
第2章 サーダナ・パーダ ― 実際に実践する
第2章は「実践についての章」です。第1章でヨガの目的が示されました。では、実際にどうすれば、そこへ近づくことができるのか。その方法を説明するのが第2章です。
ここでは、人間が苦しむ原因である「クレーシャ」について説明されます。無知、エゴ、執着、嫌悪、そして死への恐れなどによって、私たちは物事をありのままに見ることができなくなると考えます。
そして、この章で登場する非常に重要なものが「八支則・アシュタンガヨガ」です。
1 ヤマは他者や社会との関わり方、2 ニヤマは自分自身との向き合い方、3 アーサナは身体を整えること、4 プラーナヤーマは呼吸を整えること、5 プラティヤハーラは感覚を内側へ向けること、6 ダーラナは集中すること、7 ディヤーナは瞑想すること、8 サマーディは深い統合の状態です。
第2章の目的は、「心を整えるために、私たちは日常生活の中で何を実践すればよいのか」を教えることです。
第3章 ヴィブーティ・パーダ ― 意識を深める
第3章は「実践をさらに深める章」です。特に、ダーラナ(集中)、ディヤーナ(瞑想)、サマーディ(三昧)という八支則の最後の3つについて詳しく説明されます。この3つを一つの対象に対して深く行うことを「サンヤマ」と言います。
集中と瞑想が深まることで、普段とは違う非常に鋭い認識や、特殊な能力「シッディ」が現れることも説かれています。
しかしパタンジャリが伝えたいのは、超能力を得ることがヨガの目的だ、ということではありません。むしろ、それらに執着することもまた、ヨガの最終目的から離れてしまう可能性があります。
第3章の目的は、「心を深く観察し、意識をさらに深いところへ導くこと」です。
第4章 カイヴァリヤ・パーダ ― 自由になる
そして最後、第4章が「カイヴァリヤ・パーダ」です。カイヴァリヤとは、ヨガ・スートラが目指す最終的な「自由」や「解放」の状態です。
私たちは普段、「私はこういう人間だ」「こうでなければならない」「あの人からどう思われているだろう」「過去にこういうことがあった」という記憶や思考、感情に自分自身を結びつけています。
ヨガの実践によって、それらを客観的に観察できるようになり、「心に起きていること」と「本来の自分」を区別できるようになっていく。そして最終的には、心の働きや執着に振り回されない自由な状態へ向かいます。これがカイヴァリヤです。
つまり第4章の目的は、「ヨガを続けた先に、人間はどのような自由に到達するのか」を伝えることです。
ヨガ・スートラは「心の取扱説明書」
ヨガ・スートラ全体を一言でまとめるなら、第1章で「ヨガを知り」、第2章で「実践し」、第3章で「意識を深め」、第4章で「自由になる」。この4段階の道筋を示したものだと考えると、とても理解しやすくなります。
ですからヨガとは、単に身体を柔らかくしたり、難しいポーズができるようになるためのものではありません。
身体を整え、呼吸を整え、感覚を整え、心を整え、最終的には、自分の思考や感情に必要以上に振り回されることなく生きていく。